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第11回 受賞者のプロフィール 受賞者のスピーチ 選考経過 ノミネートされた作品

第11回平和・協同ジャーナリスト基金賞の選考経過

選考には、鎌倉悦男(プロデューサー・ディレクター)、小林佐智子(映画プロデューサー)、坪井主税(札幌学院大教授)、前田哲男(東京国際大教授、軍事評論家)、森田邦彦(翻訳家)、山谷哲夫(ドキュメンタリー監督)、由井晶子(元沖縄タイムス編集局長)の7氏があたりました。

 候補作品は61点(うち映像関係は14点)にのぼり、前年度(2004年)の56点を上回りました。そのうえ、今年度が「戦後60年」という節目の年にあたったせいか、意欲作、力作が例年より目立ちました。とくに新聞社による「戦後60年」に焦点をあてた企画が多かったのが今年度の特徴です。このため、甲乙つけがたく、入賞作品を決めるまでにかなりの論議を要しましたが、結局、8件が選ばれました。

 

活字部門では、沖縄タイムス社と神奈川新聞社の共同企画「米軍再編を追う 安保の現場から」と、毎日新聞社の「特集『戦後60年の原点』シリーズ」の2点が基金賞(大賞)に選ばれました。選考委では当初、基金賞を1点とする方針で、どちらを基金賞にするかで議論が長時間に及びました。が、結局、優劣をつけがたいということで両方を基金賞とすることで決着をみました。

 沖縄タイムス社と神奈川新聞社の共同企画「米軍再編を追う 安保の現場から」は、在日米軍の再編問題を追った連載で、沖縄と神奈川の米軍基地の現状を記者によるルポルタージュで紹介しながら、在日米軍の再編が何を意図したものなのか、再編によって基地機能がどう変わるのか、それにともなって自衛隊の役割がどう変わるのかを、見事に描き出しています。「米軍再編の本質に迫ろうというなみなみならぬジャーナリズム精神を感ずる」「日本にとって今最もホットな問題の解明に迫ろうという果敢な意欲を評価したい」との称賛が相次ぎました。

 毎日新聞社の「特集『戦後60年の原点』シリーズ」は全社あげての取り組みを感じさせる大型企画で、東京大空襲、沖縄戦、広島・長崎の被爆、敗戦、連合軍による占領など、60年前の節目の出来事を再検証したものです。長崎原爆についても米記者による被爆直後の惨状を伝えるルポがあったが、GHQの検閲によって日の目をみなかったという「大スクープ」も含まれています。「各新聞社の戦後60年ものでは質量ともに群を抜く」「日本人が忘れかけている60年前の事実を改めて日本人に知らしめた。日本人が将来を展望するためには、日本の過去を知ることが不可欠。そうした機会を与えたこの特集はジャーナリズムの本道を行くものとして敬服に値する」「同時進行ドキュメント的な手法も新鮮」などと絶賛する声が相次ぎました。

 奨励賞に選ばれた、斉藤とも子さんの「きのこ雲の下から、明日へ」は、母親の胎内で被爆した「原爆小頭症患者」とその親たちの苦難の生活史を紹介した著作です。斉藤さんは女優ですが、多忙な仕事のかたわら、足しげく広島に通い、親子からの聞き書きを重ねてこの記録をまとめました。元々は大学での修士論文。「芸能界にいながら独学で大学院まで進み、そのうえ原爆被害に関する論文をまとめるなんてだれでもできることではない。その絶えざる努力に敬服する」とされました。

 同じく奨励賞の信濃毎日新聞社の「日中に生きる」は、中国残留孤児の1世、その子、孫、ひ孫の4代にわたる中国からの帰国者社会の実情を紹介した連載です。広範囲にわたる丹念な取材により、いままであまり報道されることのなかったこの人たちの環境や生き方が明らかにされており、読む者に強い印象を残します。「満蒙開拓が生み出した残留孤児問題が、今なお未解決であることを改めて認識させられる」と注目を集めました。

 鈴木賢士氏の「父母の国よ――中国残留孤児たちはいま」も、写真と文で中国残留孤児の厳しい現実を紹介したものです。鈴木氏は、これまでにも韓国の被爆者、中国人強制連行の生き証人などに焦点を当てた写真を発表しており、長年にわたる、反戦平和のための報道活動が評価されました。

 NPO法人太平洋戦史館は岩手県衣川村を拠点に、ニューギニアで太平洋戦争中に戦没した日本兵のことを忘れず、いまだ野ざらしのまま放置されているその遺骨を収集する、といった活動を続けている民間団体です。この団体が発行し続けてきた会報「戦史館だより」(編集長・花岡千賀子さん)をまとめたのが「太平洋戦史館―LEST WE FORGET―」です。いわば10年に及ぶ活動が一目でわかる内容となっていますが、選考委では「日本の戦争処理のありかた、そして日本の将来の平和を考えるうえで貴重な問題提起となっている」とされ、奨励賞を贈ることになりました。


映像部門では基金賞の該当作はありませんでしたが、ローカル局制作の2作品が際だつとして、満場一致で奨励賞に選ばれました。

 まず、長崎放送制作の「銃後の村」は、第2次大戦中、長崎県のある村の町医者が撮り続けた16㎜フィルムの一部を紹介したものです。村を挙げて出征兵士を戦地に送り出すシーンもあり、当時の農村の風景や人々の生活が実にリアルに映像化されています。「アマチュアゆえの素朴な画面が、観る者を圧倒する」「よくこんな素材を見つけだしたものだ。そのこと自体に大きな意味があり、それが優れたドキュメンタリーを生んだ」とされました。

 福井テレビジョン放送制作の「有沙と私 それぞれの壁~日本に嫁いだ中国人妻を追って~」 は、日本の地方テレビ局で働く中国人女性の目を通して、日本人男性と中国人女性の2組の結婚生活を追跡したドキュメンタリーです。「日本人、中国人という個人がそれぞれ抱える問題から、日中両国が抱える問題までを考えさせる優れた作品」とされました。

 そのほか、活字部門では、神奈川新聞社の「満州楽土に消ゆ~憲兵になった少年」と満蒙開拓を語りつぐ会編の「下伊那のなかの満州」聞き書き報告集、映像部門では、中国放送制作の「絆~原爆小頭症患者の60年~」 が最後まで残りました。

 日中韓3国共通歴史教材委員会の「未来をひらく歴史 東アジア3国の近現代史」、琉球新聞社の「沖縄戦新聞」、沖縄平和ネットワーク制作の「辺野古の闘いの記録」に対しても高く評価する意見が相次ぎましたが、いずれも、すでに日本ジャーナリスト会議賞、新聞協会賞など他の賞を受賞していることから、授賞見送りとなりました。

協同関係は応募、推薦が少なく、今回も授賞作がありませんでした。

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