市民が選び贈る平和・協同ジャーナリスト基金賞

 応募・推薦締め切りは10月末です

 

  今年度の第24回平和・協同ジャーナリスト基金賞への推薦・応募の締め切りは2018年10月末です。授賞に値する優れた作品、活動をご推薦ください。どなたでも推薦・応募できます。対象は反戦、平和、反核、軍縮、協同・連帯、人権擁護などに関する作品、活動です。

 対象となる作品は2017年11月以降に発表されたものです。新聞、週刊誌、月刊誌、ミニコミ紙などの記事、単行本、写真集、映画、テレビ番組、ビデオ、DVDなど。ただし、ネット上の作品は原則として対象としません。

記事類は実物かそのコピー、単行本は本そのもの、ビデオ、DVDやテレビ番組はそのコピーを、それぞれ簡単な推薦理由(A4で1枚程度)を添えて以下にお送り下さい。返却が必要な場合はその旨を明記してください。

 

 〒107-0051 東京都港区元赤坂1-1-7-1103

 平和・協同ジャーナリスト基金運営委員会

 

 なお、昨年度は応募・推薦合わせて74点でした。このうち8点に基金賞を贈呈しました。

 

第23回基金賞贈呈式での受賞者のスピーチ

 

  平和・協同ジャーナリスト基金は第23回平和・協同ジャーナリスト基金賞の贈呈式を2017年12月9日)、東京・内幸町の日本記者クラブ大会議室で行いました。

 受賞作は次の8点ですが、贈呈式での受賞者・団体代表の皆さんのスピーチ(要旨)を紹介します。

 

【基金賞=大賞】(1点)

 ★RKB毎日放送製作のドキュメンタリー映画『抗い 記録作家林えいだい』(西嶋真司監督)

【奨励賞】(6点)

 ★沖縄タイムス社取材班の連載『銀髪の時代「老い」を生きる』

 ★シンガーソングライター、清水まなぶさんの『追いかけた77の記憶 信州全市町村戦争体験聞き取りの旅』(信濃毎日新聞社刊)

  ★西村奈緒美・朝日新聞記者の『南洋の雪』(朝日新聞高知版連載)

 ★株式会社パワー・アイ(大阪市)製作のドキュメンタリー映画『被ばく牛と生きる』(松原保監督)

 ★広島市立基町高等学校創造表現コース・美術部の『被爆者の体験を絵で再現する活動と10年間の作品集』

 ★望月衣塑子・東京新聞記者の『武器輸出及び大学における軍事研究に関する一連の報道』

【審査委員賞】(1)点

 ★書籍編集者・ジャーナリスト、梅田正己さんの『日本ナショナリズムの歴史』全4巻(高文研刊)

基金賞(大賞) 西嶋真司さん RKB毎日放送テレビ制作部

声をあげないと権力は暴走する

 

受賞を光栄に思っております。最初に受賞をご報告したかったのは林えいだいさんです。えいだいさんはこの9月1日に亡くなるまで病院のベッドの上でペンを握っておられた。特攻隊で死んでいった若者たちの悲劇、人間が人間に死を強要する戦争の不条理について書き残そうとしていた。

 日本はほんとうに戦争の教訓に学んでいるのか、誰かが声を上げないと権力の暴走は決して止まらない。えいだいさんは常にそう口にされていた。えいだいさんを見るたびに、ジャーナリストの真髄を見る思いがした。

そうしたえいだいさんの生き方、その声を1人でも多くの人に知ってほしいというのが、この映画『抗い 記録作家 林えいだい』を作った動機でした。 国民の知りたいこと、国民に伝えなければいけないことを伝えようとしているジャーナリストが沢山いらっしゃる。その一方で、今年の流行語になった「忖度」という言葉ではないのですけど、権力におもねるような報道も確かに見られる。

そういう時代だからこそ、えいだいさんの抗いの精神、反骨の精神が見直されているのではないか。

 九州には、戦後の闇を追及するすばらしい作家が沢山生まれている。上野英信さん、石牟礼道子さん、谷川雁さん、森崎和江さん、松下竜一さん、林えいだいさん。この人たちに一貫しているのは、反権力の視点です。

 私たちにできることは、そうした先人の意志を引き継ぎながら、地方の目線で日本で起きている不条理に対して向き合っていくことだろうと思います。九州から反骨の火種を消さないように今後も頑張りたい。

奨励賞 新垣綾子さん 沖縄タイムス記者

崩れた「長寿の島」ブランド

沖縄の高齢化問題を取り上げた連載『銀髪の時代』を担当した新垣と申します。取材班を代表して沖縄からまいりました。非常に光栄ある賞をいただき、ありがとうございました。今年の新年企画として取材班4人で始まった企画ですが、高齢者問題には素人の者ばかりで試行錯誤しながらやってきた。沖縄は県の発表で今年初めて全人口に占める65歳以上の割合が2割を超えた。東北などに比べるとまだ割合が低いせいか、沖縄はお年寄りの問題に対しのんびりしたところがあったとしかし、65歳未満の死亡率が男女とも全国一高いという状況があり、かつての「長寿の島」というブランドは完全に崩れてきている。

 連載で訴えたかったのは、高齢者の認知症、孤立、虐待の問題を県民が我がこととして捕らえてほしいということ。超高齢化社会をどう考えたらいいかという問題提起もしたかった。取材を通じて、高齢者の幸せを追求することは平和を実現することでもあるのだという思いを強くした。

 新聞業界全体として、合理化とか、人員削減とか、きびしい状況にあるが、今後も埋もれたテーマを掘り起こしながら、受賞を励みに地道に報道する努力を積み重ねて行きたい。

奨励賞 清水まなぶさん シンガーソングライター

風化する戦争体験を伝えたい

ぼくは長野市出身ですが、17年前にシンガーソングライターとしてデビューさせてもらった。その時、平和とか、戦争のこととかを歌うとは思っていなかったが、きっかけは13年前に亡くなった私のおじいちゃんです。

祖父は長野出身で、旧満州に行っていた。戦争末期の根こそぎ動員で兵隊になり、戦車地雷を抱えて、いわゆる「陸の特攻」をやっていた。祖父が亡くなり、遺品を整理していると、手記が出てきた。そこに戦地のことが生々しく書かれていた。その手記にメロディーを乗せてみた。それからいろんな方の戦争体験に興味を持ち、聞いた話をメロディーに乗せて歌い始めた。今から10年ほど前ですね。ところが、話を聞いた方が年々亡くなっていく。戦後70年を迎えた時、今のうちに1人でも多くの方の話を聞いておかなくてはと、全市町村を回らせてもらった。1年半かかりましたけど、76歳から101歳までの方から体験を聞かせていただいた。

兵隊に入って苦労した方、14歳で志願して兵隊になった方、ソ連兵から逃げるために頭を坊主にし顔を黒くしたおばあちゃん、目の前で亡くなった友だちを目にした方、命を永らえるために現地の人と結婚して29年間帰れなかったおばあちゃん……それをまとめたのが今度の本です。

今こそ、風化しつつある話を伝えていかなくてはと強く思います。次世代を担う子どもたちに、こんなことがあったと真実のままを伝えて、後はみんなで考えてほしい。受賞を機に、よりいっそう聞き取りを進めたい。

奨励賞 西村奈緒美さん 朝日新聞記者

福竜丸事件は終わっていない

2014年4月に高知に赴任したのですが、赴任するまでは第五福竜丸事件については、1954年に静岡のマグロ漁船が太平洋で米国の水爆実験に遭遇して23人が被ばく、久保山愛吉さんが亡くなったぐらいの知識しかありませんでした。たまたまある講演会で、実は福竜丸にとどまらず、多くの船がこの事件に遭遇して被害に遭っており、実数にすると550隻ぐらいあって、270隻が高知の船、というような話を聞いた。

 こんなことがどうして社会問題にならないのかなという、素朴な思いから元船員たちを訪ねて話を聞き始めた。

漁業で栄えた町を歩くと、「あの人もそうだ」みたいな話が出てきた。「今さらそんな話をされても困る」「関係者に知られたくない。子どもにも言ってないので家には来ないでくれ」みたいな話もあって、複雑に入り組んだ問題なんだなと思った。

 何とか元船員たちを救済したいという支援の動きもあって、労災申請や国家倍賞請求訴訟で国に補償を求めよう、という声があがっていた。事件から60年経ってもこんな動きがあるのかと驚きながら2年ぐらい取材し、連載『南洋の雪』を始めた。

救済を求めて今なお声を上げざるを得ない人がいること、福竜丸事件はまだ終わっていないことを多くの方に知っていただければと思います。

 

奨励賞 松原 保さん (株)パワー・アイ代表

貧しい映画製作者に光あてる

大阪で企業のPRビデオだとか記録ビデオとかを作っている仕事をしておりますので、自分がジャーナリストと自覚したことはありません。

こういう賞の存在も知らなかったので、授賞の電話がかかってきた時は、「サギでは」と思った。中身を知り、非常にありがたいと実感したわけです。

 不条理なことが福島で起こったことを映像で記録に残したいという思いに駆り立てられたのは、福島の人たちとの関わりだった。取材をした方々が非常に温かく受け入れてくださった。そういうこともあって、映像の中に彼らの思いが宿っていると思います。フクシマを題材にした映画の中では後発です。地道に、できるだけ彼らの思いを脚色せずに記録させていただいた。彼らの声を映画に定着させたことが評価されたのだと思う。

 福島で起こっている事実、被ばくした牛を生かし続けたいという農家の思い。その答えをずっと知りたくて、福島へ通い続けた。いのちの問題、国が責任を取らない状況。そういうことに、この映画を通して疑問を持っていただきたい。

 インディペンデントの貧しい小さな会社で映像を作っている人間にスポットライトを当てていただいた。私の後ろにいる貧しいドキュメンタリー映画製作者にとって、手本となるような、彼らのやる気を高めていただけるような賞です。

奨励賞 富田葵天さん 広島市立基町高等学校卒業生

被爆体験を継承することの大切さ

広島市立基町高校の創造表現コース12期生で、いま東京藝術大学大学院で現代アートを勉強しています。美術部が名誉ある賞をいただき、活動に携わったすべての方々を代表して、お礼を申し上げます。

 創造表現コースは、広島平和記念資料館が原爆被害の実相を後世に伝えていくために平成16年度から取り組んでいる「次世代と描く原爆の絵」事業に参加している。生徒のうちの希望者が被爆者から体験を聞き、それを絵にするという活動です。基町高校はそれとは別の原爆の絵の製作にも取り組んでおり、合わせて10年間で被爆者35人の原爆の絵を119点完成させ、日本語と英語の作品集にまとめた。

 この活動に参加したのは2年生の時。被爆体験証言者に1対1で話を聞くのは初めてで、1年かけてそれを絵にしてゆく中で多くの困難に直面した。被爆という壮絶な出来事をなかなか表現できず、悩んだ。そこで学んだことは、被爆体験を継承することの大切さでした。

こうした経験を生かして、私は3年前からライフワークとして、平和や戦争に関する作品の製作を始めました。

審査委員賞 梅田正己さん 書籍編集者・ジャーナリスト

安倍政権の背後に天皇制の歴史

先だって小学校でやっている道徳という科目が教科に格上げされた。道徳は、第2次大戦前は修身といって、最も重要な教科でした。修身には教科書があり、中学校の生徒は『国体の本義』という、文部省が作成したテキストを学ばされた。

 そこにはこんなふうに書かれていた。「そもそも我が国は天皇を国の中心として仰ぐ君民一体の一大家族国家であり、故に国家の繁栄に尽くすことはすなわち天皇のみ栄えに奉仕することであり、天皇に忠を尽くし奉ることはすなわち国を愛し、国の隆昌をはかることに他ならない。忠君なくして愛国はなく、愛国なくして忠君はない」

 これを学んだ男子の多くは軍国少年、女の子は愛国少女になった。が、1945年の敗戦によって、大日本帝国は崩壊、新しい憲法ができて、天皇は国の元首にして統治権を総攬する神聖不可侵の存在から、象徴に変わった。軍国主義のシンボルだった日の丸と、天皇制国家主義のシンボルだった君が代は教育の世界から消去された。

 ところが、わずか5年後、文部大臣が日の丸掲揚・君が代斉唱の復活を全国の教育委員会に通達。その後、紀元節が建国記念日として復活したり、元号が法制化されたり、国旗国歌法が制定されたり、教育基本法が改変されてきた。

 こういった積み重ねの到達点が、自民党の憲法改正草案です。第一条には「天皇は、日本国の元首」とあり、大日本帝国憲法の元首が復活している。それに「日本国民は、国旗及国歌を尊重しなければならない」とある。まぎれもなく、天皇制国家主義が復活している。

  安倍政権の背後にはこのような近代天皇制確立以来の長い歴史が横たわっている。私たちはよほど腰を据えてかからないと、それに立ち向かうことはできない。そう考えて、日本のナショナリズムの歴史を、5年かけてまとめた。それを評価していただき、大変うれしく思います。

 

 

奨励賞 東京新聞記者 望月衣塑子さんからのメッセージ

武器輸出の現政権をチェックしたい

この賞は、私に武器輸出に関し多くの情報や知識を与えてくださった市民や研究者の皆さま、武器輸出解禁に不安を感じている防衛企業や霞が関の官僚の方々、武器輸出反対ネットワークや軍学共同反対ネットワーク、9条の会などさまざま活動に関わっている市民や研究者の皆さまの思いの結晶です。

 日本は、北朝鮮の脅威の下で米国製の高額な武器の購入をはじめ、軍備拡張を急速な勢いで推し進めている。安倍政権は同時に急速な勢いでメディア統制を推し進めています。この賞を励みに、皆さんの平和への思いをかみしめるとともに、武器輸出に踏み切った現政権をしっかりチェック、検証し、社会に伝えて行きたい。

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